I'm so happy !

ただの俳優のオタク。

泳ぐ魚、月を飲む

よく見る夢の話だ。広い広い真っ白な世界に、わたしがぽつりと立っている。白い道が真っ直ぐ轢かれ、その両脇は水なのか、透明な水面が見える。たまに学校のときもある。夢はあいまいなので安定していないが、まあだいたいそういう世界だ。わたしの意識の問題。だだっ広い世界に、ゆらゆらと魚が泳いでいる。大きな魚。そこは空か海か?鱗がきらめき、わたしはここが夢であることを知る。ピンク色をしたわたしの何倍もある魚はこの世には存在しないからだ。ゆったりと尾を返し、泳ぐ、泳ぐ。そこが校舎ならば窓の外を。泳ぐ、泳ぐ。わたしは魚をただ見つめる。魚は逃げることも追うこともしない。また違う魚が下からのそりと現れる。なだらかな背びれがわたしの下を通っていく。大きい。横を向くとぎょろりした目玉と一瞬見つめあった。その魚は鮮やかな黄色だ。魚?本当に魚なのだろうか。色とりどりの魚みたいなものが空中を泳ぐ。わたしもなんだか飛びたくなって飛んだ。ピンクの魚を追わなくちゃ。ふと思う。あの風船みたいに膨らんだ、大きな魚を。白うさぎを追う小さなアリスのように、広い世界を泳いでいく。

たゆたうくじらの横を過ぎ(はたして、そのくじらはきれいなコバルトブルーだった。)、ピンクの魚を探す。いない。眼下の白い道に降り立って周りを見渡した。左右の水がゆらりと揺れた。鱗が見える。上を泳ぐくじらの影で足元が暗い。

ごぼりと水面を押し上げエメラルドグリーンの魚が姿を見せた。飛沫が舞う。輝いている。きれい、と思った。思った瞬間疑惑が湧いた。輝いている?光源がないのに?

反射的に空(と思わしきもの)を見ると月が浮かんでいる。大きな月だ。満月だった。大きな月の前を大きな魚が泳ぐ。月にも光源が必要なはずだが、夢なので深く考えないことにする。ぴかりと輝く月。そうして、月に群がる魚。魚。魚。大小色とりどりの。息を飲んだ。

「飲まれてしまう」

それはわたしの声だったのか。大きなピンクが目の前を塞ぐ。急いで飛んだ。間に合わない。ピンクは大きな口を開けて、月を、飲んだ。

めがさめた。

秒針が音をたてる。起き上がってカーテンを開けて空を見た。大きな輝く月が照る。わたしはキッチンへ向かい紅茶を淹れた。家の中は沈黙に満ち、夜の静寂が広がっている。窓際で湯気の立つティーカップを持つ。アッサムの波に月がゆらりと写った。足の裏が冷たい。そうしてわたしも、ゆっくりと、月を、飲んだ。

(夢の終わりははどこだ。)

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