I'm so happy !

ただの俳優のオタク。

 

 

この間、久々にリア友(院生、一般人、小学校からの幼馴染)に会って話をした。
お互いの家からタクシーで10分くらいのチェーンの居酒屋で、ウーロンハイとハイボールを飲んだ。お通しの味のしないポテトサラダをつつきながら。
開口一番「まだおたくしてるの?」と聞かれ、「これからもずっとするよ」と答えた。
ぼんやりと話を進めるうちに、彼氏へのプレゼントの話になった。彼女は彼氏への誕生日プレゼントに、二万円ほどのものをあげるらしい。はあ、二万円。わたしは多少面食らった。プレなら、まあ二万円はタダの範囲内である。

「俳優にどのくらいのものあげるの?」
「えーと、こないだの誕生日は、20万くらいだった」
「……はあ?」

今度は彼女が面食らったらしい。
ハイボールをぐびりと飲み、真面目な顔で言う。

「それなんか楽しいの」
「楽しくない」
「見返りあるの?」
「まあ、着てくれたりとか」
「当たり前じゃん!」
「まあでも、着たらだいたいタダだし」
「……何言ってるの?」
「わかんない」
「わたしもわかんないよ」

まあ、当人も意味がわからないし、第三者なら余計にわからないなあと思った。

彼女とは、小中高と同じ学校に通っていた。家が近くて部活も同じで、だいたい同じようなものを好きで、だいたい同じように生きていたのに、どうしてこうもズレてしまったのかなあ、と、わたしは思ったのだった。彼女は二万円のプレゼントでも、ちょっと高いな、くらいだったらしい。二万円ってタダじゃん、だいたい。誤差の範囲っていうか。と切り出したわたしに、二万円はタダじゃないよ、と言うのである。
これがおたくの身内の会話だったら、二万円ってタダじゃん、そうだねタダだね、あと一枚くらい買うべき?やめろやめろ買わなくていいよ!となるのである。みんなタダというけど、買うことは推奨しない。面白い。


だいたい、おたくというのは同じような思想で固まりがちである。同じような思想のなかで、ああ三万の布は安いしタダだよ、七万の最前は安いし買いだよ、三列以内じゃないと席がないよ、全通できなきゃ一公演も観ないよ、やんややんや。
そうして同じ思考にずぶずぶずぶずぶ浸っていって、最後にはなんだかわからなくなる。
ちなみにこれはわたしの周りの思想の話。

また違うグループではきっと、今回は三回くらい入ればいいかな?プレゼント今回はしなくていいかな?誕生日プレゼントTシャツでいいかな?一般席でいいかな?お花出せるけど出さなくていいかな?いいよいいよ!趣味だししなくていいよ!転売でチケット買ってる人って本当どういう感覚なのかな?わかんないよね、ねー!やんややんや。
みたいなラインがぴこんぴこん繰り広げられているんだろう。死なねーかな?理解できねーし全員死んでほしいな。まあ憶測だけど。

こういうグループたちは互いに理解し合えない。理解し合えないので、戦うしかない。基本的に女は野蛮である。理解しようという段階は踏まない。元が戦闘民族なので、掲示板で叩き、ツイッターで叩き、現場で叩き合う。だいたいが陰口なので、表面化しない。たまに表面化すると、盛り上がる。ひとしきり盛り上がって、飽きたら終わる。そうして落ち着くと、噂だけが伝聞され、よくわからなくなる。


そこまで思想して、虚無感に苛まれる。ああー虚無。おたくとは虚無だ。

 


お互いにお酒を三杯飲んで、その日は解散した。
わたしは、同じ人種だったはずの彼女と、違う場所に来てしまった気がして、なんだか悲しくなった。